1.今まで楽しめていた趣味や熱中できていた事柄にまるで興味が持てなくなるという『興味・喜びの喪失』
2.気分がふさぎ込んでしまい自己否定的な認知(ネガティブな考え方)に捕われてしまう『抑うつ感・気分の落ち込み』
スイスの精神科医キールホルツは、うつ病の病因論に注目して『外因性・内因性・心因性のうつ病』を分類しましたが、臨床心理学の知見に基づく心理療法・カウンセリングの効果が最も期待できるのは、特定の心理的原因やストレスの負荷、トラウマ体験によって発� �した『心因性のうつ病』だと言えます。
外因性うつ病……脳疾患(脳血管障害)、頭部外傷、アルコール・薬物の中毒症状、内分泌障害(肝臓・腎臓関連の内分泌障害)など外部的な要因によって発症したと推定されるうつ病。
内因性うつ病……発症の原因を特定することが困難な遺伝的あるいは身体的要因によって必然的に発症したと推定されるうつ病。外因性うつ病や心因性うつ病によって発症を説明することができないうつ病が内因性とされる。
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心因性うつ病……対象喪失(死別・離別)の悲哀反応、対人関係や職場環境のストレス、人生や自己存在に対する苦悩、過労状況に伴う心理的疲憊など心理的な要因によって発症したと推定されるうつ病。
現代精神医学の分類・診断のグローバルスタンダードと認識されているDSM‐W−TRは、『現象学的なエピソード(症状の既往)』に着目して網羅的な精神障害の分類をしているので、うつ病の原因にはこだわっていませんが、心理的原因(ストレスに対する対処・認知)を解消するカウンセリングによって、うつ病症状が改善するときには心因性うつ病としての特徴を持っていると考えられます。
『抑うつ感・気� ��の落ち込み』と『興味と喜びの喪失』はうつ病の典型的な基本症状ですが、これらの症状が一日中あって2週間以上続いている場合に、うつ病の医学的な診断が下されることになります。基本症状以外に発生しやすいうつ病の症状としては、『睡眠障害・摂食障害・性欲の消失』など本能的欲求の著しい低下・失調が見られ、『意欲減退・思考力と決断力の低下・記憶力の低下』といった持続的な知的能力の発揮にも一定の障害が起こってきます。
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脳神経科学や薬理生理学(抗うつ薬の効能)の知見からの推測では、『モノアミン仮説』にあるようにセロトニン(5‐HT)やノルアドレナリンといった情報伝達物質の分泌障害(再取り込みの障害)がうつ病の原因の一部として考えられています。抗うつ薬の脳内における薬理機序では、各種モノアミンの再取込みを効果的に阻害することで、神経細胞(ニューロン)間のシナプス間隙においてセロトニンやノルアドレナリンを適度に増加させます。
『抗うつ薬』には、古典的な三環形・四環形の抗うつ薬や、SSRI(パキシル・ルボックス・ジェイゾロフト)・SNRI(トレドミン)といった再取込み阻害の対象となる神経伝達物質を限定した抗う� �薬があります。SSRIは一般的に安全性の高い薬とされていましたが、近年では『攻撃性や衝動性の亢進・希死念慮の生起』といった副作用が報告されていますので、気分障害(うつ病)へのSSRIの処方では医師の経過観察と服薬指導が重要になってきます。
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精神医学的にうつ病の病態を分類すると、まず抑うつ感・意欲減退・希死念慮などの"うつ病相"だけが際立っている『単極性障害(うつ病)』と"うつ病相"と"躁病相"とが交互に循環する『双極性障害(躁鬱病)』の分類をすることができます。双極性障害(躁鬱病)は更に、明瞭な躁病相とうつ病相を繰り返す『双極性T型障害』と相対的に軽い軽躁状態とうつ状態を繰り返す『双極性U型障害』とに分けることができます。
2年以上の長期にわたる慢性化した軽症うつ病の気分障害として『気分変調性障害(dysthymic disorder)』があり、この場合には毎日の気分が抑うつ感や悲哀感に傾いた状態が当たり前のようになってくるという特徴があります。気分変調性障害の抑うつ感や絶望感、意欲減退の強度は、一般の大うつ病性障害よりも弱いですが、抑うつ的な気分が生活の一部のように慢性化してくるので、症状の改善レベルをはっきり測定しにくいという問題もあります。何となく気分が落ち込んでいたりやる気が出なかったりする状態が慢性的に続くので、治療・カウンセリングの動機づけが起こりにくく、『気分の良い・悪いの区別』がぼんやりと曖昧になりやすいわけです。
双極性障害の躁状態とうつ状態の気分変動が2年以上にわたって慢性化すると『気分循環性障害(cyclothymic disorder)』という精神疾患になりますが、気分循環性障害では軽症の躁状態とうつ状態とを延々と繰り返すようなかたちで症状がでてきます。気分障害の慢性化事例である気分変調性障害と気分循環性障害は一般に『難治性』とされますが、治りにくい理由の一つは心因性うつ病のように発症の心理的原因やストレス事態を特定しにくいということがあります。
日常的に気分が落ち込み続けていて気分変動のブレが小さい"気分変調性障害"、長期的に軽度の躁状態とうつ状態を繰り返し続ける"気分循環性障害"には、体質・気質・脳の情報伝達過程などに関連する何らかの生物学的基盤があると推測されます。心理的原因やストレスの多い環境要因などが明らかになってくれば治癒の方� ��づけを付けやすいのですが、気分変調性障害(気分循環性障害)の発症要因が曖昧であるときには、抗うつ薬や抗不安薬を用いた対症療法に留まりやすい傾向があります。
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